【AIQue 紹介】スマートスピーカーを使ったカードゲーム〜流行りで終わらせないために〜

現時点のスマートスピーカーの弱点「言語認識、言語理解の弱さ」を逆手にとったゲームが誕生しました。「AIQue(アイキュー)」です。これは、カードに書かれた言葉(「晴れ」「空」「ロンドン」など)を、どうやってスマートスピーカーに言わせるかを競うゲームです。

開発メンバー3名にインタビューをしました。

AIQueメンバー
福澤貴之氏:カードデザイン担当/クリエイティブスタジオekoD Works代表(左)
水落 大氏:コンセプト&映像担当/電機メーカー機械学習エンジニア、メディアアーティスト(中央)
西野勝章氏:ゲームデザイン担当/電機メーカーエンジニア、アナログゲームデザイナー(右)

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音声デバイスの弱点、それをゲームにしたかった

ーー開発のきっかけを教えてください。

福澤:11月くらいに水落さんがGoogle Home miniを買ったんですよ。

水落:セールで(笑)。Google Homeを買って、どんなことが出来るか試してみたんですよ。使い道は結構あるなぁと思ったんです。タイマーかけたり、音楽を流したり。一方で出来ないことも沢山あるじゃないですか。離れたところだと反応し辛かったり、難しい質問文には答えられないとか。

そういう時に、たまたま面白いと思ったことがあって。家で僕が「OK、Google」と言うと反応するけど、妻が言っても反応しなかったんですよ。人によっては、反応しにくかったりするじゃないですか。でも僕が「OK、Google」と言った後に、妻が「5分タイマー」と言うと通じたりするんですよね。2人で話しかけるのも面白いな、と。それを使って何かできないかなと思ったのがきっかけです。

ーーそれで、ゲームに?

水落:はい。僕は本業はエンジニアで、機械学習や画像認識などのテクノロジーをビジネスで使えるようにするための技術開発とサービスの設計をやっています。それで思うのは、流行りで終わらせてはいけないということで。

2017年って、AIとかディープラーニングがすごく流行ったんですよね。日本人って、流行りに乗るんですよ。でも、「流行り」だと、いずれ終わるじゃないですか。流行りが終わると日本人は離れていく。

何が問題かというと、日本で一番話題になるのは「未来の話」なんです。シンギュラリティ(技術的特異点。AIが人間の能力を追い越すと言われる時点)とか未来の話をして、一旦皆でめちゃくちゃ期待感を持って、現状どうなのっていう話になったら、「意外とまだ使えないよね」と言って導入が進まないことが懸念でした。

AIはまだ不十分なんです。たとえば、「今日の天気は?」という質問には「今日の(AAA場所)の天気は、(晴れ)で気温は(BB度)です」と答えるとパターンを決めたルールベースの応答しか出来ない。これと似た質問でも「今日晴れている場所は?」だとルールから外れるから答えられません。

でも、未来っぽい機能を実現するためのルール作りを続けても、文章を理解出来たことにはなりません。ルールではなく、文章を解析するような根本的な技術に時間をかけるには、AIの良さを活かしつつ、弱いところは人間側が合わせるのも必要だと思ったんです。

何でもできるAIを目指すために、弱いAIが活躍できる環境を作ることが大事。

水落:まだまだ発展途上にあるAIがどう世の中に出ていくかを考えた時に、たとえば、自動運転があると思うんですけど、まだ不可能ですよね。

ーーはい。

水落:自動運転だったら、失敗が許されないので性能を上げていくしかない。でも、たとえば人がいると予測出来ない部分が多いから一般道路ではなく、車しかいない高速道路でやろうかとか。問題を置き換えることでハードルが下がるかもしれないですよね。性能が出ない時に、現状何が出来るかっていうと……

1つは、頑張って研究してAIの性能を上げること。これはすぐには難しい。

2つめは、環境を整備して性能を補ってあげる。さっきの高速道路みたいに。スマートスピーカーなら使う場所を限定するとか。

3つめは、ペットロボットにしてしまう。認識しなくても「ちょっと今、ご機嫌が悪いんですね」と許容されるような、誤認識しても仕方ないよねと思われる環境を作ってあげる。

4つめは、誤認識することを良さに変える。AIQueはこれです。ゲームに対するこだわりはなくて、弱さを価値にできる場所ってどこなんだろうって考えた結果が、ゲームでした。

人工知能のレベルを上げていくために、その場しのぎのルールを作り込むだけじゃなくて、弱いAIでも活躍できる場所を作って、根本的な技術を伸ばしていく。それが大事だと思ったんです。

初めてスマートスピーカーを使う人にスマートスピーカーを知ってほしい。

AIQueのカードとGoogle Home Mini

ーーそれから、ゲーム作りを始められた。

水落:僕は全然アナログゲームをしないんで、ゲームに詳しい西野さんにゲームのデザインを、福澤さんにカードのデザインをお願いしました。

ーーゲームのデザイン?

西野:ルール作りです。家にも150〜200くらいのゲームがあって、今も他のゲームの開発をしているんですけど。愛好会で20〜30人でゲームをやったり。僕も水落さんと同じ会社で隣の席で(笑)、機械学習系のエンジニアをしているんですけど、人と人のコミュニケーションが好きなのでゲームをやっています。

ーーお隣の席で(笑)。開発でご苦労されたことは?

水落:AIQueはスマートスピーカーや人工知能への新しいアプローチの提案なのですが、単純にゲームとして面白いと思っています。ゲームとしても楽しめるようなワード選びとルールづくりですね。

福澤:そこはまだ調整中なんですけどね。たとえば、親が最初に引いて、他の人を指名して言わせるのかとか、思いついた人がどんどん言っていくのか、とか。やりようはいくらでも。どういう場面で誰が言うのが適切なのかを西野さんが筆頭に決めています。僕はアナログゲームはビギナーなので、ビギナー目線でフィードバックをしています。

西野:スマートスピーカーが初めての人は、このゲームを通じてスマートスピーカーの使い方を発見していくのでシンプルなゲームがいいんですよね。ただ、何回もやると飽きがくるので、飽きがこないように追加ルールや上級者ルールをどうするかは今、工夫しているところです。

ーー今、考えている?

西野:ええ。ちょうど2月17日にクラウドファンディングが終わるんですけど、その頃には出来上がると思います。今テストプレイを重ねて、フィードバックをもらっているところです。

スマートスピーカーが初めての人は、「そういう風に質問をするんだ!」という驚きがありますよ。たとえば、「恋」というカードが出た時に「北海道で一番美味しいお菓子は?」と聞いたり。「白い恋人」と答えて欲しかったんだと思うんですけど、それじゃ、答えられないんだよなぁ、と。最終的には「不倫とは?」と質問して、その回答の中に「恋人」って出てきました(笑)。

ーー「美味しい」は主観ですもんね、それはGoogle Homeには難しいかも。

福澤:「はさみ」も難しいんですよ。「紙を切る文房具は?」と聞いても答えてくれないんですよ。

水落:そうそう。でも、「星野源の代表作は?」と聞くと「恋」と答えてくれるんですよ。そういう質問はおそらくルールベースで答えられるようになっているんですよね。

ーー特徴がわかりますね。では、そろそろ我々にもゲームをやらせてください!

実際にやってみたら、盛り上がりました。

簡単なルール説明【今回はGoogle Home Miniを使用します】
カードを順番に引いていきます。
青いカードに書かれた言葉をGoogle Homeに言わせます。Google Homeが言ってくれたら、正解。カードを1枚もらいます。
赤いカードは条件カード。「モノマネしながら言う」「3m離れて話しかける」などが書いてあります。これに従って言いましょう。
最後、一番多くカードを手元に取った人が勝ちです。
*ルールはまだまだ変わる可能性があります。

AIQueメンバーは慣れているので、今回は筆者と弊社スタッフの2名に優先的に答えさせてくれました。もしも全員慣れていたら、早いもの勝ちで回答するなど、いろんな設定で遊べそうですね。

盛り上がっている様子は写真でお伝えします。

Google Homeが言って欲しい単語を言ってくれるか、正座して回答を待ちます▼

モノマネカードが出ました。モノマネしながら喋ると、Google Homeが認識してくれません(泣)。筆者の「ごくせん」仲間由紀恵のモノマネもダメでした。

「より面白い質問の仕方をしたい!」と頭を抱えて考え込みます▼

(AIQueメンバーは今回は見守りに徹したので)最終的には弊社スタッフが圧勝でした。圧巻は、「空」を言わせる問題。ラーメン好きのスタッフが、「○◯にあるラーメン屋は?」で見事「俺の空」という店名を答えさせ、全員歓声を上げてナイス質問を称えました。頭の柔らかい人が勝ちます!▼

スマートスピーカーの未来は?独り言を何でも拾う?

ーーいやぁ、面白かったです。スマートスピーカーを理解してもらうにも良いですね。スマートスピーカーの未来をどのようにお考えですか?

水落:スマートスピーカー自体が住宅の中に埋め込まれるようになると思います。

福澤:アイコンとしてのスピーカーは残りますかね?それとも、火災報知器とかスプリンクラーみたいに、空間に一個あるけど、モノ自体を意識せずに、「あぁ、なんか照明暗くしたいなぁ」ってつぶやいたら、勝手に暗くなるとか(笑)。

全員:(笑)

福澤:コレに話しかけるっていうものがあるのか、それとも、独り言を全部拾っちゃう形になるのか。

西野:個人の感想としては、話しかける対象が欲しい(笑)。水落さん、どうですか?

水落:うーん、独り言にも抵抗がなくなってくるとは思います。僕も最初「OK、Google」に抵抗がありましたけど、それもネイティブになってくるはずだし、明示的に言うことは減ってくるんじゃないかな。声紋認証が発達して、技術的にはウェイクワードなしでも解決できるようになるだろうし。

福澤:指パッチンでイケるようになってほしいですね。

ーーAIの未来は?

水落:今年はブームがフッと下火になると思うんですけど、ビジネスではサービスにAIが入っているのが当たり前になってくると思います。わざわざ、AIが入っていると言わない、使っていて当たり前だよねという風になると思います。

福澤:Googleフォトあるじゃないですか。あれ、結構賢いですよね。勝手に「ネコ」のアルバムとか出来てて、その時初めて「AIが社会実装されている〜」と実感しました。

西野:今のAIってエンジニア的にはターゲットスペシフィックというか、特定の目的に使うために発展してると思うんですけど、アンドロイド的なものを求めている人たちって絶対いると思うんです。それがどこで出てくるのか、その境目は面白いと思います。

ビジネス利用って、特定の目的の方が遥かにやりやすいじゃないですか。だから、ここ数年はないと思います。アンドロイド的なものの開発は、儲からないので今は大学で研究するとかしかないんですけど。

ーー儲からない?

西野:”何でもできる”は”何にも出来ない”のと同じなんですよ。Google Homeは、何でも出来るんじゃなくて人間が設定すれば出来るんですよね。

何でもできるってことは、家の中で「暑いなぁ」とつぶやいた時に、「暑い」という言葉に付随した感情とか場の関係性まで推論して「エアコンをつけて欲しいのか」「冷たい水を飲みたいのか」を理解して対応してくれる。そういうAIがあった時にいくら払ってくれるのかという価値観の紐付けが今は全然出来ないんですよ。

Googleフォトだったら、今まで何日もかけてやっていた写真の仕分けが楽になる、それなら1万円払います、となるんですけどね。

ーーたしかに。新しい価値観過ぎて値段がつけられないですね。むしろ、そんなAIはちょっと怖いかも(笑)。

全員:(笑)

何でもかんでもスマートスピーカーでやろうとすると、すぐに飽きる。

ーー今後の展望は?

水落:他言語でも作りたいです。英語なら「ーtion」とか「ーtive」みたいに単語の一部をお題にするとか。テクノロジーと人間の関係性をテーマにしたアートを作っているので、機械をうまく人間社会の中に溶け込ませる作品はこれからも作っていきたいですね。

福澤:アート作品として見ても、AIQueは面白いと思うんです。近い将来、人工知能をバカにするなんてことは出来なくなるかもしれないじゃないですか。でも、今は、市場に出始めたばかりで、ちょっと人工知能を下に見られる(笑)。そこから起こるイレギュラーな答えに笑ったり、一喜一憂できる。それは「今」だから出来るんですよ。

「30年前のAIはまだ誤認識してたんだねぇ」なんて言われるようになると思います。そうしたら、AIQueのゲームはもうできませんけど(笑)。

ーー(笑)。どんな人に使って欲しいですか?

水落:初心者の人には、チュートリアル的に使ってほしいです。今のスマートスピーカーには、こちらが手を差し伸べて文脈理解できるように質問しなきゃいけないんだって分かってほしい。

西野:反対に、最初にスマートスピーカーを買った人たちって、もう飽き始めていると思うんです(笑)。そういう人には、もう一度楽しんで欲しいですね。

福澤:スマートスピーカーがもてはやされ始めている時に、飽きている人向けにゲームを作るっていう(笑)。

西野:(笑)。スマート照明とか、今は設定が複雑ですけど、今年はもっと便利なものが出ると思います。でも、スマートスピーカーが電気をつける道具になっちゃうとつまらないので、気分転換でAIQueで遊んでもらえると。

水落:何でもかんでもスマートスピーカーでやるのは、やっちゃいけないことだと思います。スマート照明の話が出ましたが、音声でやる良さは、複数の電気が一度にオンオフできることですよね。単純に1つのスイッチを押すだけだったら、手の方が早いじゃないですか。

今は、何が音声認識の良いところなのかを分解して、次に何をやるかを決めないと皆が飽きてしまうと思います。だから、効率の良いところ、悪いところを皆が理解するのが、これからスマートスピーカーを盛り上げていくためにも必要だと思うんですよね。このAIQueで、それを理解してもらえると嬉しいです。

ーーそうですね。そういう意味ではAIQueはいいですね。とても楽しかったです。ありがとうございました。

AIQueは、2月17日までクラウドファンディングを開催中です。
https://camp-fire.jp/projects/view/60298
http://aique.mizumasa.net

SmartHacks Magazine 編集部

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