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「VUIでは、今まで裏方だった人が表側にも出てこられる」スキル「ムーンフェーズ」開発者 市川氏に聞く。

連載「スキル開発者に聞く」第2回は、「ムーンフェーズ」の開発者、市川 純氏にお話を伺いました。市川氏は、スマートスピーカーが日本で発売する以前からAlexaスキルを開発し、現在はAlexaスキルやAVSに関する本も出版しています。

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プロフィール

お名前:市川 純(いちかわ じゅん)氏
お仕事:サーバーの構築・運用など、インフラエンジニア

開発したスキル:
「ムーンフェーズ」では、その日の月の月齢や呼び名を聞くことができます。

「ムーンフェーズ」の詳細はこちら▼

スキルの着想は奥様から

ーーはじめに、開発されたスキル「ムーンフェーズ」について教えてください。

市川 純氏(以下、市川氏):「ムーンフェーズ」はその日の月の状態を教えてくれるスキルで、月の満ち欠けを数字で表した「月齢」を教えてくれます。月齢によっては「上弦の月」や「十三夜月」のような名前もあるので、呼び名がある時は月齢と一緒に聞くことができるようになっています。

ーー何故このスキルを開発されたのでしょうか。

市川氏:ムーンフェーズの発想は、妻から得たものなんです。妻は縁起が良いということで満月の日を気にしているんですよね。手帳にその日を毎月メモしているので、今日は何の月なのかわかるスキルがあれば楽になるかもと思って。

ーーでは奥様もスキルを使われているんですか?

市川氏:それが、もう習慣になっているので満月の日を記憶していて、あまり使っていないようです(笑)

ーーなるほど(笑)他のユーザーの方からは反響はいかがですか?

市川氏:あまりチェックしている訳ではないのですが、1日に数十人ぐらいでしょうか。このスキルは海外でも公開しているので、それを含めた数になります。

2016年5月にアメリカでリリース、複数言語にも対応してみる

ーー海外でもリリースされているとは驚きました。

市川氏:実はこのスキルは、最初にアメリカで公開したものなんです。まだ日本でAmazon Echoが発売されるずっと前で、2016年の5月頃でしょうか。その後ほかの言語にも一通り対応させて、どうやってAlexaスキルを複数言語対応させるのか勉強しています。

ーースキルの利用数は国によって違いがありますか?

市川氏:結構ありますね。最初にこのスキルを公開したアメリカでは、最近はあまり使われていません。アメリカはすでにAlexaスキルが3万個近くあって埋もれてしまっているし、似たようなスキルもあるからだと考えています。意外に利用数が多いのが、ドイツです。

ーー何故ドイツで利用数が多いのでしょうか。

市川氏:正確な理由はわかりませんが、やはり「まだスキル数が少ないから」というのはあると思っています。まだ数が少ないから目立っている部分もあるんじゃないかなと。月の満ち欠けがドイツの文化に関係があるのかとかは、ちょっとわかりませんが(笑)

ーースキルを公開するにあたって、国ごとの違いはどうでしたか?多言語対応の苦労なども教えてください。

市川氏:やはり多言語対応はしんどかったですね。イギリス・カナダ・インドのスキルは全て英語なんですが、同じ単語でもニュアンスが違うものとかもあったりして…。ただ、アメリカ版を出していればAmazon側がその辺りを調整してイギリス・カナダ・インドでもリリースはしてくれました(Alexaが公開された国から順次)。

それと、国によってフィードバックの厳しさというかリリースまでのハードルは違いました。ただ、これは国というよりもスキルを申請した「時期」が関わっていると考えています。

ーー時期、ですか?

市川氏:はい。たとえば、最初にムーンフェーズを申請したアメリカの時は、ひとつのサンプル発話に対応するだけでよかったんです。「今日の月は?」という質問にのみ答える、みたいな。でも最近はそれでは審査が通らなくて、もっと複数のサンプル発話を用意するようフィードバックされます。

思うに、サンプル発話が少ないとスキルがうまく反応してくれず、スキルの評価が下がってしまうことから、より多くの発話を考慮する方針に変わったのかなと。

日本語での情報公開の前から精力的に活動

ーー市川さんはAlexaスキル開発に関する本も書かれていますよね。

市川氏:そうですね。Alexaスキルの開発手順やVUIの設計、AVSを使った「Echoの自作」の方法などを解説しています。

出典元:Alexaスキル制作テクニック (I・O BOOKS) 市川 純 (著)

ーーどういった経緯で本を書かれることになったのでしょうか?

市川氏:2016年にスキルを出す前から、私はJAWS-UG(AWSを利用する人のコミュニティグループ)のIoT専門支部の運営を行っているんです。そこでAlexaに関する勉強会などを行っていて、使ったスライドも公開していたのですが、それを見た方からご連絡をいただくようになりました。

そういったご連絡の中で「月刊I/O」という雑誌から「単発の記事を書いていただけませんか?」とのお話をもらいました。でも実際に書き始めてみると1ヶ月分では収まらなくなってきて、2回に分けて書いたのですが、どんどんAlexaが盛り上がってきたので、本も出しませんか?という話になったんです。

ーー本には音声AIアシスタントやAlexa skillについてかなり詳細に書かれていますが、どうやって調べられたんですか?

市川氏:以前はまだ日本語の情報がなかったので、ひたすら英語で調べていました。後はAmazonのドキュメントを読み、実際に試しての繰り返しですね。途中で日本語対応して公式のドキュメントもいっぱい出てきたので、本はもう良いんじゃないかと心が折れた時もありましたが。

ーー「スマートホームスキル」は個人では作るのが中々難しいと思います。でも、市川さんの本ではスマートホームスキルも解説されていますよね。

市川氏:そうですね。AWSやデバイスに関しては、IoT支部で活動していたので以前からある程度知識を持っていて、それが役に立ちました。

スマートホームスキルを使うと、Philips Hueのような照明など「操作するデバイス」をすでに出している企業にとっては、わりと簡単に音声操作ができるようになるんです。

アメリカではスマートスピーカーが流行りだす前から「スマートホームデバイス」がたくさんあったんです。だから、Amazon Echoで操作できる家電もすごく多くて、便利だった。そういうところがスマートスピーカーがアメリカで広がった理由の1つだと思います。

日本でも、メーカーさんにどんどん対応してもらってスマートスピーカーが盛り上がっていくといいですよね。

Alexaスキルが日本でもっと増えるには

ーー日本でももっとAlexaスキル数が増えるにはどうすればいいと思われますか?

市川氏:やはり、Amazon Echoが一般的に買えるようになればもっと増えると思います。まだ手に届いていない開発者も多くいるので、その辺も行き渡ればもっと盛り上がるんじゃないかなと。あとは、Amazon側が開催するイベントですね。

ーーイベントですか?

市川氏:スキルを開発するとAmazonからTシャツがもらえる」というイベントが、3月1日から日本で始まったんです(2018年3月31日午後11:59まで)。

出典元:Amazon Alexa – スキル開発者への特典

私はアメリカで発表された情報を2016年10月から毎月ブログでまとめていたんですが、その時にアメリカのスキル数も数えていました。それを計算してみると、2016年10月には約4,500個だったスキル数が、1年弱で約7倍の32,000個まで増えたんです。

出典元:Slide Share – Alexa Skills Kitでプロダクトの可能性を広げる Re:Cap?

ーー7倍とはすごい伸び方ですね。

市川氏:このグラフが大きく伸びている時って、AmazonがそういったTシャツキャンペーンなどを行っているんですよね。向こうではさらに「一定以上利用されているスキルは、Tシャツに加えてAmazon Echo Dotをプレゼント」とか、そういった施策もあって。場合によっては賞金が支払われることもあります。

ーー確かにそういったイベントは嬉しいですね。

市川氏:そうなんです。スキルをマネタイズする方法ってまだないんですが、それでもサーバー代などの費用はかかってくる。そういった「Alexaスキルを動かすための環境代」に関する補助は、日本でも「AlexaのAWSプロモーションクレジットのご紹介」のページで申し込めば、もらえるようになってきています。

さらにアメリカでは、特定のカテゴリで人気のスキルになると開発者報酬などもあったりしますので、そういった収入を得ているエンジニアもいるようです。

VUIの進歩と、携わっていく人材

ーー今後何か新しいスキルを作られるご予定はありますか?

市川氏:Tシャツが欲しいので、日本向けのは作るつもりです(笑)次は、政府が公開しているオープンデータを使って何かスキルを作ってみようと考えています。

ーーオープンデータですか。

市川氏:はい。そういう「コンテンツ」の面って非常に悩むんですよね。スキルを作る時って何かしらのデータを集めなきゃいけないことが多くて、個人でやろうとすると結構大変なんです。オープンデータは自由に利用できるので、面白いものが作れるんじゃないかと。

逆に会社でスキルを製作する場合は、すでに会社が色々なコンテンツを持っていることが多いと思うのでそういった面では作りやすいのではないかと思います。

ーー個人単位としては、どういった方がスキル開発に向いていると思われますか?

市川氏:シンプルですが、やはり「人としゃべるのが好きな人」だと思います。お互いの会話の中で「こう返ってきたら面白い!」というのがわかりますし。スマートスピーカーって会話で全て操作していくので、「会話のデザイン」って非常に重要になってくると思うんです。なので今後は、そういった会話をデザインしていくデザイナーも必要になってくるのではないでしょうか。

ーーなるほど。

「ピカチュウトーク」という人気スキルを作った方の話を聞いたことがあるんですけど、あのスキルってたとえばずっとピカチュウが話していると、そのうちピカチュウ自身が疲れちゃうんですよね。キャラクターと紐づくようなスキルは、そこまで会話のデザインを考えて設計しないと面白くなくなっちゃうんだろうなと。逆にそれができる人がいれば、良い物ができあがるのではないでしょうか。

ーー技術面ではどうでしょうか。

市川氏:技術的な話では、サーバー側のエンジニアに勧めたいですね。今までのアプリとかって、評価されやすいのは、どうしても表側だったんです。見た目や使いやすいさのデザインが大事で、裏側でサーバーエンジニアが何をしていても、その部分は見えなかった。でもVUIではサーバー側のプログラミングだけで作れるので、今まで裏方だった人も表側に出てこられます。そういう部分もVUIのいいところかな、と感じていますよ。

ーーありがとうございます。今後も楽しみにしています。

SmartHacks Magazine 編集部

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