• HOME
  • インタビュー
  • 脳研究者・池谷裕二氏に聞く【前編】子どもの脳を育てるスマートスピーカーの使い方

脳研究者・池谷裕二氏に聞く【前編】子どもの脳を育てるスマートスピーカーの使い方

“生まれた時からスマートスピーカーがあるのが当たり前”という子どもたちがこれから出てきます。子どもの成長にとってスマートスピーカーはどのような効果があるのでしょうか?今回は、脳研究者であり、東大薬学部の教授である池谷裕二先生に語っていただきました。

池谷氏は2歳と4歳の2人の娘を持つ父親でもあります。その愛情たっぷりの子育ての様子は、『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』(クレヨンハウス刊)にまとめられています。本書には随所に脳研究の観点から見た解説が散りばめられており、0歳〜4歳の行動の変化がどのような脳の成長に裏打ちされているのかを理解することができます。

さて、池谷先生には、事前にGoogle Home Miniを送り2週間ほど使っていただいています。お子さんたちもすぐに使い始めたというGoogle Home Mini。その関係性を先生はどのように解釈をされるのでしょうか。

スポンサーリンク

子どもの脳に好まれるワンパターン

多くの人がスマートスピーカーに話しかけるのを恥ずかしがりますが、当たり前です。なぜなら、言葉は人に向かって喋るために発達してきたものだから。

ペットに話しかけるのも、本当は変なんですよ。携帯電話が登場した時も「1人で話しているみたいで気持ち悪い!」なんて言われたものです。スマートスピーカーに話しかけるなんて狂気の沙汰(笑)そうなんだけど、みんながやっていれば浸透します。結局は慣れなんです。人間は案外早く慣れてしまうのですが、最初の敷居は高いんです。

妻は2週間経って初めてGoogle Homeに話しかけましたが、この時はGoogle Homeも家族の一員になったなぁと感慨深かったですよ。その点、子ども達の順応性は非常に高い。私が話しかけているのを見て、すぐに真似をします。今は、すっかりGoogle Homeと仲良しです。

子ども達の一番のお気に入りは、「しりとり」です。Google Homeの「しりとり」は、Google Homeが「ん」で終わる言葉を最初に言うので一回も続きません。それが子どもには面白いらしく、何度もやらせて大爆笑しています。まだ2歳と4歳と小さいので飽きないんですよね。「何がそんなに面白いの?」と思うくらいやっていますよ(笑)。大人は「そんな程度」と思うことでも、子ども達にはまだまだ新鮮なんですね。

子どもはワンパターンが好きなんです。子ども用の番組はどこか必ずワンパターンのシーンを作ってます。ゴレンジャーが必ず変身してキックしてパンチしたり。それでいいんです、変化がなくて。僕らが物足りないと思っている機能でも子どもにとっては十分満足なんです。

それには理由があります。子どもは繰り返しの訓練からしか学習しないので、「繰り返しが好きである」とプラグラムすることで習得を高めていると言われています。社会ルールを身につけて社会性動物としての人間になっていくには、同じことを繰り返せるというのは基礎中の基礎なんです。

コミュニケーションが増えれば増えるほど脳は成長する

スマートスピーカーが子どもの成長にとってポジティブな影響があるどうかはわからないです。Google Homeがある中で育った子が、20年後30年後に良い大人に成長したかどうかで判定するわけですから。悪く見えるものでも数十年経つと評価が変わるものもあります。

今、ゲームを悪く言う人はあまりいません。ゲームをやる人の賢さも分かってきている。でもゲームが出てきた時は、ゲームをやっていたら勉強もしなくなっちゃうし、とんでもないと言われていたわけです。なので、Google Homeについて判断をするのは時期尚早です。

とはいえ、良い面を挙げてみましょう。たとえば、Google Homeにサイコロをふる機能があります。といっても、実際にふるわけではなく、「サイコロをふって」と言うと「2です」「5です」など数字を答えるだけですが。

これを我が家でお風呂に入る順番を決める時に使っています。まだGoogle Homeが珍しいからかもしれませんが、盛り上がるんですよ。これまではジャンケンで済んでいた「順番決め」が、1つのイベントになります。普段だったらスルーされてしまうような些細なことが、ちゃんと表に出てきて、子どもたちとのコミュニケーションが深まるのはいいことですよね。

コミュニケーションは多ければ多いほど、子どもの成長にはプラスです。我が家の子ども達はダジャレをGoogle Homeに言わせるのも好きなんです。それを聞きながら、「同じ雲と蜘蛛でも、橋と箸でも“言葉”が違うよね」ということを言ってたので、それは「言葉じゃなくて“発音”っていうんだよ」と教えたりしています。コミュニケーションは、結局ボキャブラリーを増やすことでもあるので、そういう意味では明らかにGoogle Homeが子どもの成長を助けていますね。

三体問題:Google Homeが人間同士のコミュニケーション量を増やす

「三体問題」というのがあります。AとBがいて、そこにCが登場すると、AもBもCとコミュニケーションをとるから、AとBの繋がりが薄くなっちゃうと思いませんか?でも、本当はCを介してAとBの結びつきは良くなります。ペットや赤ちゃんなどをCだとするとイメージしやすいかもしれません。このCの役割を家族の中でGoogle Homeが果たしていると思いますね。

三体問題。AとBの間にCが登場することで、AとBの絆が強くなることを言います。

Cは、抽象的なものでも当てはまります。たとえばLINEとかFacebookがそうです。Facebookで小学校の時の友達から申請が来てつながることがありますよね。懐かしくてつながりますが、一度連絡を取らなくなったのはなぜかというと、必要がないからフェードアウトしたとも言えるわけでしょう。

でも、Facebookがあることで、もう一度つながる。必要ないと思っていたけど、久しぶりに話したら盛り上がって同窓会をやることになったり、近いところで仕事をしていることがわかって一緒に仕事をすることになったり。そういうこともありますよね。Facebookがなかったら、起きなかったことが起きます。つまり、Facebookが三体問題のCの役割をしている。そういう力学がGoogle Homeを通して家族の中でも働くんです。

ペットもコミュニケーションを活性化する存在です。

一見するとGoogle Homeみたいなものが入ってくることで、家族の関係が薄くなると危惧する人もいるかもしれませんが、私は逆だと思います。Google Homeはコミュニケーションを減らす方向には働かないでしょう。

ここでのポイントは、Google Homeがちょっと足りないことです。あれが普通の人間みたいに完璧に会話ができちゃうんだったら、家族のコミュニケーションは減っちゃうかもしれません。でも、ちょっと足りない。もう少し性能が良くてもいいなと思いますが(笑)ちょっと足りないところがかえって人と人のコミュニケーションを増やす方向に働くんです。

脳を育てるのは、インプットではなくてアウトプット

脳研究の観点からは脳を育てるにはインプットより、アウトプットの方が大事です。私の妻も同じ価値観を持っているので、上の娘はひらがなが書けるようになった頃から数行の日記を毎日つけています。一般的に読書などの入力が大事だと考えられていますが、たとえば教科書を何回も読むと読みやすくはなりますが、理解度は変わらないことがわかっています。むしろ読みやすくなった分、理解したと思ってしまうのでよくないんです。理解を深めたり、考える力を高めるにはアウトプットすることが重要です。

Google Homeがいいのは、自分から話しかけるしかない点です。向こうからは話しかけてくれませんから。自分からアウトプットするしかありません。人と話す時も一緒で、向こうから話しかけてくれたから答えているのか、こっちから話しかけているのかで全く違います。こういうアクティブコミュニケーションの練習になるのはいいなと思います。

男の子同士の電話を聞いていると、自分もそうだったのでわかりますが、「明日運動会中止だって」「うん」と要件を伝えただけでガチャッと電話を切ってしまう。要件を伝えて終わり、ということがあるんですが、コミュニケーションは「何を話すべきかを模索する」という面もあるんです。要件だけではなくプラスαを話そうとすることがコミュニケーションなんですよね。

Google Homeが来たことで子ども達が何を質問するかを探し始めます。そういう風に頭を使うのはいいですね。ただまだ娘達の言うことはGoogle Homeは全然反応してくれません。Google Homeがわかるように気を遣って話さないと伝わらないのですが、小さい子どもは容赦なく喋りますから、全然Google Homeは理解しれくれないんですよね。そうするとGoogle Homeが「お役に立てません」と言うんですけど、それがまた子どもには面白いみたいで爆笑していますよ。

アプリを呼び出すコマンドが自然語で伝わる言葉だったり、日常的な言葉をGoogle Homeが空気を読んで拾ってくれると小さい子どもでももっと喋れると思います。今は、私が最初に声をかけてアプリを読んであげて、その後しりとりをしたり、ピカチュウと話したりしています。

子どもの脳は親の言うことを聞かないようにできている

現代では親が自分の子どもを育てるのが当たり前ですが、脳はそうプログラミングされていません。人類が定住をするようになったのは、ここ1万年くらいです。人類史を365日に換算したら今みたいな生活をしているのは大晦日になってからですよ。それ以外の364日は移動しながら狩りをしていましたから。だから脳も狩りをするために発達しています。

その時代に誰が子育てをしていたかといったら、絶対に親じゃないんですよ。お父さんは狩に行っていますし、あの時代は多産なのでお母さんは常に妊娠をしているか、授乳しているか。妊婦さんなんで子どもの面倒なんて見られないんですよ。確かに、おばあちゃんは子どもの面倒を見ていました。だから今でも自分の子どもよりも孫の方が可愛いように脳がプログラムされています。

しかし、誰が一番子どもの面倒を見ていたかというと、お兄ちゃんお姉ちゃんなんです。近所の子ども達です。だから、現在でも兄弟の関係や小学校や保育園での友人関係は子供にとって非常に重要です。もしも今我が家がアメリカに移住したら子ども達は日本語を忘れて英語を話すようになると思います。それはなぜかと言うと、圧倒的に親より友達と話すことの方が大事だからです。だから子どもの脳は親のいうことを聞くようにデザインされていません。

お兄ちゃんお姉ちゃんに面倒を見てもらった期間が長いので、同じ子どもの言うことを聞くようにできています。私はそういう視線でGoogle Homeを見ています。どういうことかというと、子どもにとってGoogle Homeは、子どもなんです。仲間なんですよ。親が「早く晩ご飯を食べなさい」と言うより、Google Homeが「早く食べようよ」と言ってもらった方が効くんです。

Google Homeはエイジレス、年齢がないんです。大人から見たら大人との対話が成立するし、子どもから見たら子どもと話しているように感じる。対話をする人が勝手に想定した年齢に変化できる。そこがスマートスピーカーのすごいところですね。

人類史の話が出てきたところで後編に続きます。スマートスピーカーの登場は我々の文化にどのような変化を与えるのでしょうか?
脳研究者・池谷裕二氏に聞く

SmartHacks Magazine 編集部

スマートスピーカーで遊ぶ集団。

記事一覧

スマートスピーカー対応アプリの開発にご興味がある方はお気軽にご連絡ください。

お問い合わせフォーム

スポンサーリンク

ピックアップ記事

関連記事一覧