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「新しいものを広める方法は、楽しんでいる姿を見せること」株式会社Voicy代表取締役CEO 緒方憲太郎氏インタビュー

ここ最近存在感を増している「Voicy」は、これまでのBlog、Twitter、Instagram、Facebookなどの文字や画像を使ったコミュニケーションツールとは全く違う“声のメディア”です。

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現在(2018年5月時点)は、インフルエンサーやタレントといった有名人から、エッジのたった経験をシェアする一般人、6歳児までバラエティに富んだ約250名のパーソナリティが、ニュース、エンタメ、雑学などさまざまなジャンルでコンテンツを発信しています。

今回は、VUI時代に先んじて声のメディアを立ち上げ運営している株式会社Voicyにお邪魔してきました。同社代表取締役CEO 緒方憲太郎氏にVUIの可能性やあまり知られていない制作会社としての側面、スマートスピーカーの未来について教えていただきました。

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声は全てを看破する。声のメディアは「生き方が出る」

ーーVoicyは今ぐんぐん伸びていますよね。その人気を支えるのが面白いパーソナリティだと思いますが、どのような基準で配信をお願いしているんですか?

緒方憲太郎氏(以下、緒方氏):今の段階ではできるだけバラエティに富むようにバランスを考えています。選ぶ基準は「その人の声を聞いて人が楽しめるかどうか」ですね。

ーー人が聞いて楽しめるかどうかは内容ありきだとは思いますが、声質なども関係ありますか?

緒方氏:声の良さは実はどうでもいいんです。

ーーそうなんですか! アニメ声とかが大事なのかと思っていました……。

緒方氏:声って意外とその人の生き方がそのまま出るんですよね。そっちの方が大事。これまでの経験やアウトプットを見て、その人の喋りを聞きたい人がいるかどうかを考えます。

ーー声には生き方が出る、深いですね。

緒方氏:今250人くらいパーソナリティがいますが、どういうコンテンツがどういう人にどの時間に聞かれているのかというデータをとっているので、そういうデータも参考にします。

「データを蓄積しています」と語る株式会社Voicy 代表取締役CEO 緒方憲太郎氏。

ーーデータまで。企業秘密かもしれませんが、どんな人が人気が出るのか教えてください。

緒方氏:ポイントはいくつかあります。1つは、もともと人気者でその人の生声を聞いてみたいという人がいます。

ーーアイドルっぽい人ですか?

緒方氏:そうですね、ミュージシャンとかですね。あとは素を晒せる人や頭のいい人。

ーー有名どころですとイケダハヤトさんみたいな方でしょうか?

緒方氏:イケダハヤトさんはぁちゅうさんは、めちゃくちゃ頭がいいんですよ。声には、考えるスピードや思考回路も出ます。そこがエンターテイメントになるんですが。もともとブログとか文章を書いている人たちは、物事に深く切り込んで考えている。だから喋ってもすごく面白いんですよね。

この数年間、YouTubeとかInstagramとかで「可愛いが正義」になっていました。BlogやTwitterを書いて賢かったり面白かったりした人たちが「可愛い」に負けていたんですよね。それが声の文化が来て、中身勝負に変わってきました。

ーー「可愛い」に「賢い」が負けていた、と。たしかに映像、画像で発信するとヴィジュアルが重要になりますよね。

緒方氏:声の文化が広まることでまた違うタイプの人たちがスターになる可能性が出てきたんです。イケダハヤトさんがTwitterに書かれてましたが、Voicyのランキング「デイリーリスナーTOP30」には匿名パーソナリティが結構いるんですよ。コンテンツの中身さえあれば、匿名で顔がわからなくてもランキングに上がってこれるというのは声のメディアの特徴的なところだと思います。

IoT時代に5つ目のマスメディアとインフラをつくろうと思った

ーー話が前後しますが、もともとVoicyはどういうきっかけでつくられたのですか?

緒方氏:2年くらい前にIoTの時代が来てから、全てのものから音が出て情報も出るようになると考えました。そのとき多くの人は情報を出すツールの方をつくろうとしましたけど、僕は流通網をつくることを考えました。マスコミ4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)がありますが、5番目の媒体はIoT上のマスメディアになると思ってVoicyをつくったわけです。

ーー新しくマスメディアをつくろうとは、普通なかなか思えないですよね。

緒方氏:だから僕はビッグチャンスだと思ってやってますよ(笑)。マスメディアを丸々つくれるときが来た! とワクワクしながら事業をつくっています。

わかりやすく説明すると、自分たちでつくったマスメディアの上にVoicyっていうメディアを1つ持っている、ということなんです。もっとわかりやすいのは、ファミコン(インフラ)をつくりながらマリオ(ソフト)をつくっている感じなんですけど、これからは他の人にもマリオをつくってほしいと思っています。

僕らのツールを使ってみんなにどんどんビジネスをしてほしいんです。うちにシステム使用料さえ払ってくれればスポンサーをつけてもいいし、広告をとってもいい。マネタイズは自由にやってもらって自分たちでペイすればいいと思っています。わざわざ「Voicyを使っています」と言わないでいいし、「音声放送をはじめました」と言って端末に配信してもらって構わないんですよ。

放送局としてコンテンツ制作もする

ーーVoicyさんに対して“ボイスメディアの運営会社”という印象を持っていましたが、お話をお伺いしているとテレビ局のように“制作も配信もする放送局”という方が合っているように思えてきました。

緒方氏:メディアの運営会社だと思っている方が多いですよね。放送局としてプラットフォームも提供していますし、あまり知られていないかもしれませんが、企業さんの音声コンテンツも制作しています。

たとえば今、Google Homeの中のニュースメディアのうち、Voicy公式ITニュースや野村証券、毎日新聞、皆藤愛子のgoo Today!ニュースなどの合計6本をVoicyが制作・提供しています。ニュースは全部で15本あり、うち40%はVoicyのインフラを利用しているんです。

ーーそれだけ企業から依頼が来る理由は音声でコンテンツをつくるスキルを買われてということでしょうか?

緒方氏:それもそうですが、理由はあと2つくらいありますね。一番コアな理由は、VUI(ボイスユーザーインターフェイス)をトップレベルでやっていることだと思います。

これまで音声配信をして、受け手の詳細なデータをとれた人はいないんですよね。でもIoTから音が出るなら受け手のデータがとれます。先ほども言いましたけど、僕らはどういうコンテンツが、何時に、誰に、どれくらい聞かれているのかというデータを沢山持っています。

だから、音声コンテンツをVoicy上のサービスに出すと、リスナー反応データから、より良い体験の音声コンテンツにカスタマイズして出すことが可能なんです。

ーーデータが生かされていますね。企業から音声コンテンツ制作の依頼が来るもう1つの理由は?

緒方氏:ローコストってことですよね。すごく少ない労力で音声化と端末配信ができるんですよ。

たとえば、毎日新聞のコンテンツは面白くて、月曜日から日曜日まで一人ずつ違うパーソナリティがニュースを読むというコンセプトでつくっています。共同オーディションで集めたパーソナリティが7人いるわけですが、それぞれVoicyのレコーダーアプリを使って家で録音しています。スタジオも借りなくていいから、安価に一瞬で音声放送ができるんです。しかも配信も簡単ですから、1時間もあれば最新のニュースを届けることができます。

ーーそんなに簡単に配信できるんですね。

新しいものを社会に広めるために“楽しんでいる姿”を見せる

ーーVoicyは「声のブログ」と言われることもありますよね。表現手段としてすごく新しいメディアですが今はリスナーも増えて社会に浸透してきています。スマートスピーカーも新しいという点では同じだと思うのですが、社会に浸透させるにはどうしたらいいのでしょうか?

緒方氏:新しいものを社会浸透させたいとき社会全体に対して浸透させようとか説得しようとしてもダメなんです。

たとえば、ラップを広めたいと考えて社会全体に対して「言葉には韻があって」と説明をしても誰にも刺さらない。それよりも「ラップって面白い!」と言っている人たちが集まって楽しんでいる方いいんです。その姿を見て「やってみたい」という人が出てきます。

大事なのは「それを導入して一番ハッピーな人は誰だろう?」と考えることです。

Voicyも同じです。「声っていいよね!」と思う人を集めて楽しんでいます。「声っていいよね!」と思わない人たちに分かってもらおうとは思いませんし、「おもしろい」と思ってくれる人をとにかく集めて、一緒にやっていけば広まるだろう、と。

ーー「おもしろい」というのがポイントなんですね。

緒方氏:そうです。人の心が動くことが大事。ビジネスとか新規事業って、人が喜ぶものをつくることを目指せば、どうにかならないことはないんですよ。

便利かどうかの市場は小さい。大事なのは心に刺さること

ーースマートスピーカーのスキルやアプリをつくってビジネスをしたいと考える方が大勢います。ビジネスになるかどうかが人に喜んでもらえるかどうかで決まるとしたら、人に喜んでもらえるスキルは出てきそうでしょうか?

緒方氏:今スマートスピーカー周りにいる人たちは基本的に音声の機能性しか見てないですよね。便利かどうかしか見てない。たとえばスマートスピーカーに声をかければ電気がつきますけど、今まで誰も電気をつけることにお金を払ったことはありません。

便利かどうかという市場はすごく小さいですし、機能性のところは最終的には全員つくれるようになって、差が出るのはエモーションのところを動かせるかどうかということになると思います。

声ってすごく心に刺さりやすいものですから、うまく刺さればワクワクしたりホッとしたりしやすい。そこを無視していては、人に喜んでもらえるものは出来ないと思います。VUI時代の主戦場は声なんですけど、機能性なんてその20%くらいだと思いますよ。

たとえばオフィスに人が入ってきたときに元気良く「こんにちはっ!」と挨拶するのがいいのか、「調子はどう?」がいいいのか。それとも普通に「こんにちは」がいいのかは違いますが、どれか適切なものがあるはずなんです。そういう会話をスマートスピーカーのスキルやアプリもやっていくことですよね。

ーー会話の設計はスキル開発の際に多くの人が苦労しているところだと思います。どういう会話が適切かを考えるのはどうしたらいいのでしょう?

緒方氏:自然な会話を勉強することですよね。ラジオ放送だったらどれが一番面白いのか、塾の先生はどう喋るのが一番伝わるのか、エレベーターガールだったらどうか。正解はないけど、その中でどこまで人の気持ちにコミットするかだと思います。

スマートスピーカーはツールで終わってしまうのか

ーー広告についてお伺いします。スマートスピーカーのスキルやアプリに広告がついて、マネタイズすることは可能だと思いますか?

緒方氏:可能だと思います。むしろ狙っています。たとえば、ピカチュウを呼び出して「ピカチュウ ピカチュウ」としゃべった後に「私は今日◯◯飲むわ」と飲料メーカーの広告を入れることは可能ですよね。この入れ方だとユーザー体験は悪くなりますけど。

ただ、そこに広告を入れるのはAmazonやGoogleなので、自分たちで刈り取るようにするには工夫がいります。

ーーたしかに……。スマートスピーカーを使って何かをしようとしている人たちがマネタイズできるかが難しいです。

緒方氏:スマートスピーカーって、ツールなんです。スマートフォンではアプリを使った先に巨大なECがあるわけで、同様にスマートスピーカーはサービスに誘導するまでのツールだと思ってます。だから本当にマネタイズできるようなスマートスピーカーのスキルをつくるにはその先のビジネスまで考えないと、ただのスキル制作受託ビジネスになってしまいます。

ーースマートスピーカーはツール、と。

緒方氏:とはいえアプリだってツールなので、ツールだから市場が盛り上がらないわけじゃないんです。カメラだって写真をとるツールですが、カメラ自体にこだわる人がいるからマーケットが成立するわけで。スマートスピーカーがこれから、こだわりを持たれるような存在になるのか、それとも見逃されるような存在になるのか。それは本当に時代の流れ次第だと思います。

時代の流れ次第では、誰もがスマートスピーカー上にスキルを1つ持っているのがトレンドになってスキル制作会社がすごく儲かる、ということもなくはないと思いますよ。

ーーーーなるほど。時代がどう変わるか次第ですね。ちなみにVoicyさんの目指す最終的な姿は何でしょうか?

緒方氏:IoTから声と情報が出る時代になったら、なんだって出来ると思っています。ただ最終ゴールはまだ見えません。全力で試行錯誤して走っている最中に自分たちの知見や視野が広くなり、その上で見えてくるんじゃないでしょうか。

Voicyとそのインフラ事業は、IT音声業界の先端を走っている事業なので、うちにしか見えないものがある。それでさらに先手が打てる。そんな風に進んでいくんでしょうね。でも事業って、簡単にゴールが見えないから面白いんだと思いますよ。そして誰も見えていない大海を僕らが切り拓いていきます。

ーーこれからがますます楽しみですね。今日はどうもありがとうございました。

公式サイト:Voicy

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SmartHacks Magazine 編集部

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