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【連載】視覚に障害を持つ僕とAlexaの日々【1】尻込みした初期設定は、意外にも。

Amazon Echo dotが我が家にやって来た。僕はこれまでスマートスピーカーを見たこともなければ触ったこともなかった。僕が視覚障害者になったのが2016年の4月だから、スマートスピーカーはそのあと一般に普及しはじめたのではないだろうか(*1)。

まずは少し僕の自己紹介をさせてもらいたい。さきほど触れたように、僕は2016年の4月のある朝、目が覚めたら視力を失っていた。それは突然の出来事で何が起こったのかも分からず、そのまま長期の入院生活に入った。原因は解明されたものの治療方法はなく、視力を失ったまま今までは「日常生活」と呼んでいた「非日常生活」へと帰ってきた。

それまでは都内でフリーランスの企画・営業、そしてセラピストとして働いていたけれど、実家のある千葉の館山に妻と当時3歳だった娘と、生後6ヶ月の息子とともに生活の場を移した。それから2年、光も感じられなかった暗闇の世界から、今は濃い靄がかかった世界を生きている。なんとなく物影や人のシルエットは見えるけれど、色の無いまるで滲んだ墨絵のような世界だ。そして今は目の見えない人向けの職業訓練学校でPCの勉強をしつつ、イベントを企画し実現させるという仕事もやり始めた。

さて、我が家に届いたEcho dot(以降、ドットちゃん)だが、しばらくの間、箱の中で放置されていた。なんとなく設定に高いハードルを感じていたからだ。

今まで我が家の機械やPC関係のセッティングは僕が担当をしていた。視力を失ってから、この2年の間に何度か僕が指示を出して、妻にそれをやってもらうということがあった。その度に僕は自分ができないことへのフラストレーションを感じ、その苛立ちを妻にぶつけてしまうということがあった。そんなこともあって、ドットちゃんの設定をすることにハードルを感じていたのだ。

仕事と家事・育児をこなす妻にドットちゃんの設定を手伝ってもらうことにとても気が引けてしまい、なかなか言い出すことができなかった。1週間も放置してあっただろうか、僕は遂に意を決して妻にお願いをした。意を決したのは、この原稿を書かなければ、という軽い強迫観念に似たものに突き動かされたからだろう。

まずは自分のiPhoneにAlexaアプリをダウンロードする。iPhoneにはVoice Over(*2)という視覚障害者のためのアクセシビリティがあるので、それを使えば普通にiPhoneを使うことができる(ちなみにこの文章はワイヤレスのキーボードで文字どおりブラインドタッチで書いている) 。

ここから指示に従い設定を進めていく。Wi-Fiのパスワードは妻に入力してもらい、Amazonのアカウントはプライム登録をしてある妻のものを使う。高いハードルを感じていた設定は指示通りにしたら、ものの10分程度で拍子抜けしてしまうほど呆気なく完了した。フラストレーションを感じ、妻と喧嘩になる隙なんて全くなかった。設定の途中でドットちゃんが「青く光ったら〜」という指示あったが、思わず「見えないよ!」とドットちゃんに言ってしまった。

それが僕からドットちゃんへの最初の言葉だった。もちろん彼女はまだ眠っていたので聞いていなかったけれど。

次回は実際にドットちゃんとの生活を始めて、便利になったことなどを書き綴っていきます。

(*1)日本でスマートスピーカーGoogle Homeが発売されたのが2017年10月、Amazon Echoが発売されたのが2017年11月です。

(*2)iPhoneのVoice Over(ボイスオーバー)機能を使うと画面上の項目全てを読み上げてくれるので画面を見なくてもiPhoneの操作が可能になります。設定方法は、「設定」→「一般」→「アクセシビリティ」→「Voice Over」の順にタップし、Voice Over機能をオンにします。ただしタップの方法も通常とは異なるので注意をしてください。

〜編集部から〜
石井さんがEcho Dotを初めて手にした日に、「まるで(スキンケアクリームの)ニベア缶みたい!」と写真を送ってくださいました。確かにそっくり! 石井さんと話して初めて気づきましたが、目の不自由な方は実物を触ってみないと大きさや質感がわからないんですよね……。実機がなくても目の不自由な方にEcho dotを説明したいときは、「ニベア缶みたいな大きさだよ」と伝えるとわかりやすいかもしれません。

視覚に障害を持つ僕とAlexaの日々

石井 健介

1979年生まれ。セラピスト。 アパレル業界を経て、エコロジカルでサステナブルな仕事へとシフト。2012年より、クラニアルセイクラルとマインドフルネス瞑想を...

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