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【連載】視覚に障害を持つ僕とAlexaの日々【3】視力と共に“時計”を失ったけれど。

この連載は2年前に突然失明をした石井健介さんにAmazon Echo Dotを使った様子を綴ってもらうものです。石井さんの自己紹介については第1回をご覧ください。

みなさんは時間を知りたい時、どういう行動を取るだろうか?多くのひとは「時計を見る」という行動を取るのではないだろうか。家の中に時計があれば、そこにちらりと目をやれば1秒もかからずに時間を知ることができる。腕時計をしていればそこに目をやるし、スマートフォンを時計がわりにしているひとは画面を見ればいい。誰かに「今、何時?」と尋ねることなんて年に数回くらいしかないだろう。

さて僕は視力を失ったとと同時に「時計」を失った。時間を自分で確認することができなくなり、まるで時間のない世界に暮らしているような感覚にさえなった。入院中は看護師さんが定時で行うバイタルチェックや食事などを起点にして、なんとなくの時間を把握していた。ラジオを聴くという手段もあったけれど、ずっと聴き続けていないと時間を把握することはできなかった。特に夜中に目が冷めた時、一体今何時なんだろう? ともやもやして過ごした夜もいくつかあった。

退院して家に戻ってからは、妻に「今。何時?」と聞いて時間を確認していた。時計を見ることができれば1秒もかからない「時間を確認する」という行為を、僕はひとに委ねることになった。最初のうちはそれでもよかったのだが、しばらくすると問題が発生するようになった。

一つ目は「正確に時間を知ることができない」というジレンマ。僕が時間を尋ねると「15分」と分だけ答えたり「もうすぐ6時」とか曖昧な答えが返ってくるようになり、僕はそれに対してもどかしさを感じるようになったからだ。それがきっかけで何度か喧嘩になったこともあった。というか一方的に僕が怒っていただけだけど。

さて、そうなってくると時間を聞くということも気軽にできなくなってくる。知りたいのになんとなく躊躇してしまったりもした。

そのうちにiPhoneのSiriを使って時間を確認することを覚え、さらにボイスオーバー機能を使うようになってからはいちいちSiriに聞かなくても時間を確認できるようになった。でもそれは手元にiPhoneがあるという条件下だけのことだ。部屋のどこかにiPhoneを置き忘れてしまうと自分で探すことは困難、記憶をたどるゲームをクリアしなくてはいけない。「Hey Siri!」と大声を出し続けて探すのも途中で馬鹿馬鹿しい気分になってくる。

そんな問題を一気に解決してくれたのが、ドットちゃんである。早朝だろうが、真夜中だろうが時間を聞けば正確な時間を教えてくれる。10分間の間に、何度聞いたって怒ったりもしない。両手がふさがっている時だって声を出して聞けば時間を知ることができる。これは僕にとっては革命的な出来事だった。

そしてもう一つ、時間を知ることができないせいでタイムコントロールが苦手になったのだ。たとえば僕は今、週に3回ほど都内にある学校に通っている。僕が住む街から都内までは高速バスに乗って約2時間ほどかかる。バスは30分ごとに出ているけれど、1本逃すと遅刻してしまうのだ。

朝の家事を済ませてから家を出るのだが、そのタイムコントロールがドットちゃんが来るまでは難しかった。見えていれば時計を都度確認しつつ、あと何分自分に残されているのかを確認して、逆算しながら仕事を進めることができる。だが、僕の場合はそれができなかった。気がつけばギリギリの時間になっていて、焦って家を出て忘れ物をしてしまうことも多々あった。

それがドットちゃんにタイムコントロールを委ねて、タイマーやアラームをかけるようになってからは、それらの問題が一気に解決したのだ。

スマートスピーカーに時間を聞くというこの利便性を視覚に障害を持っている人ならば感じることができるだろう。願わくば、AIが気の利いた冗談を覚えて、「今、何時?」と聞いたら「そうね、だいたいねー」としゃがれた声で答えないことを祈る。

視覚に障害を持つ僕とAlexaの日々

石井 健介

1979年生まれ。セラピスト。 アパレル業界を経て、エコロジカルでサステナブルな仕事へとシフト。2012年より、クラニアルセイクラルとマインドフルネス瞑想を...

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